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「で、いつ告るの?」
「え!?こっ、告!?」
いきなりの恋愛トークに思わずむせそうになった。
「私は九月の文化祭がいいと思うんだ。」
「九月なんてすぐじゃん!無理無理無理!」
背中越しだが、彼女の慌てた表情が容易に想像できて声を殺して笑った。
「じゃあ、果夏はずっと見てるだけで終わらせる気?」
「…そんなことは…ない、けど。」
──カナ。
初めて彼女の名前を知った。
「それに絶対脈アリだって!何度も目合うんでしょ?」
「うん、何度か…。」
「だったら、イケイケ!」
「う、うん!!頑張る!」
おいおい、勝手に盛り上げるなよ、と振り向いて言いたい気持ちを必死に抑える。
でも、結果が見えていても気持ちを伝えることはきっと大切だ。
高岡が無下にこの子を傷つけないよう、願うしか俺には出来ない。
ジュースを飲み終えると、静かにベンチを立った。
もしかしたら、大会で会えるかもしれないな、と思うとキツかった練習にも熱が入った。
今思えば俺という存在を彼女に認識して欲しかったのかも知れない。
俺も大概子どもっぽい。
予想通り、中学と高校の大会に彼女の姿があった。行われる時間に差があったから、ほんの一瞬、すれ違うだけだったが。当然声をかけられるはずもなく、ただいつものように見るだけ。
当の彼女は高岡がいないから、自然体で仲間と笑いあっていた。また新たな表情が見れた。
この頃には、いい加減自分の気持ちにも気づいていた。
彼女が、カナが好きだった。
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