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もう一人の、昔修平の首を絞めて殺そうとした奴は、空白の時間の意味をとって、スペースという名前をつけた。こいつは、おかしなことに、ぼく達の中の誰かが好きらしく、その子が修平と仲良くなるのが気に入らないみたいで、つまり、嫉妬の感情からそういう行為に出たというわけだ。その時は、高校入学を控えた春休みのことだったのだけれど、とても女の力とは思えないような、すごい怪力で首を絞められたという。
正直、笑い事じゃないんだけど、修平さえ現れなければ、そういった奇行に出ることもないと思われたので、かぐやには悪いけど、ぼくらはそれ以来、一度も会うことはなかった。お互いがもう少し大人になって、今より落ち着いたら会おうという、頼りない約束を交わしたまま。
「修平はこの大学なの?」
ぼくはのそっと起き上がって、懐かしい顔を見ながら尋ねた。
決して偏差値は低くない、そこそこ名の知られた大学ではあるけれど、修平の実力なら、もっと上の国公立大でも余裕で合格できていたはずだった。
「そうだよ。心配でわざわざ同じ大学にしてやったんだよ」
「修平……。ありがとう。でも大丈夫、ぼくはもう誰とも深く関わるつもりは……」
というぼくの曇りがかった顔を払拭するかのように、
「なんつってな。嘘だよ。単なる偶然だ。俺も、高校ですっかりさぼっちまってさ。3年の夏から必死で挽回して、ようやくここ滑り込めたんだよ。大体、3年も会ってなかったんだぜ。おまえの受けるトコなんて俺しらねーし」
修平はぶっきらぼうに説明した。
「そっか、そうだよね」
「ってわけだからよ。きいてるか? 俺は、また永森と友達に戻るけど、もし、また俺のこと殺そうとしやがったら、今度はこいつのこと押し倒して無理やり襲ってやっちまうからな。それが嫌なら、おまえは大人しくしてろよ。今度は俺からの警告だ」
修平がぼくの頭を抱え、瞳を覗き込むようにそう宣言するので、ぼくはなんだかドキドキしてしまった。修平がぼくを無理やり犯したりするような奴じゃないとはわかっていても、面と向かってそんなことをいわれたら、やっぱり動揺はしてしまう。例え、ぼくの性別がどうであれ。
「反応はどうだ?」
「わからない。けど、ぼくが理解すれば、あいつもきちんと理解すると思うよ」
「ならいい」
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