鞘火 失われた土曜日  その2

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「どうせ、かぐやが朝から風呂入るしなぁ。夜洗っても無駄になると思ったんじゃない」 「なによ無駄って。最低1日2回水浴びするのは乙女の嗜みでしょ。そうじゃない?」 「ごもっともで」  と修ちゃんは事務的に頷きました。どうせ男にはわからない気持ちに決まってます。 「とにかく、今度遊に会ったら、きつくいっておいてね。せめて、シャワーくらいは浴びてから寝てって。あいつ、私が日記でいったくらいじゃきかないから」 「ん。ああ」 「ところで修ちゃん.私になにか謝らなきゃいけないことなぁい?」 「……さあ。思い当たらないけど。浮気した覚えはないし」 「ふうん。シラを切るつもりね。でも、無駄よ。ちゃんと証拠も持ってきたんですからね」  そういって、私は、鞄の中から、見るのもおぞましい小さくて黒い物体を、修ちゃんの手の中に渡しました。 「……参ったな。もう見つかったのか」  と修ちゃんは、観念したように空を仰ぎました。 「これって、コンセントタイプの盗聴器と、小型の盗撮カメラよね。起きたら机の上に置いてあったけど、どこに仕掛けたの?」 「かぐやが見つけたんじゃないのか?」  私のいい回しを疑問に思ったのか、修ちゃんは少し身を乗り出してきいてきました。 「違うわ。寝てる間にシャドウが見つけたんだと思う」 「そうか。2個だけ置いておけば、仕掛けがばれてることをアピールするには十分だってことか」  修ちゃんは、一人納得しながら、その機材を鞄の中にしまいました。 「全部でいくつ仕掛けたの?」  と私は続けて問い詰めました。修ちゃんの言葉をきくまでは、この2つだけだと思っていたのです。 「6個かな。部屋に3つ、あとは脱衣所に、キッチン、玄関」 「もうっ。信じられない。修ちゃんはいつからそんな変態さんになったの? 今となっては遊が昨日お風呂入らなくてよかったわ。ねぇ、こんなことしないで、私の裸が見たいなら素直にいえばいいじゃない。いくらでも見せてあげるのに」 「そりゃ、ありがたい提案だけど、別に俺だって好きでやってるわけじゃないよ」 「わかってるけどぉ。いくらシャドウを倒すためだからって、修ちゃんにはそういうことやって欲しくないのよ。修ちゃんはずっとかっこいいままじゃないとダメなの」 「ああ、もうやらないよ。というか、バレたから、やりたくてもできないしな」 修ちゃんは、諦めたように呟きました。ええ、わかればいいんです。
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