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そう、修ちゃんはかっこいいままでいてくれないとダメなんです。昔私を助けてくれたあの時みたいに。
小学4年生の時、私はクラスで浮いた存在でした。急に泣き出したり、物忘れが激しかったり、体調を崩して保健室で過ごすことが多かったりと、周りの目には情緒不安定な子供に映ったからだと思います。しかも、お母さんには半分しか日本人の血が流れていないので、私にも薄っすらとだけど、東欧系の血が流れているし、おまけに母子家庭だし、いろいろな意味で目立っていたのです。
最初は無視されたり、性格をからかわれたりしました。
でも、それはだんだんとエスカレートしてきて、スカートめくりされたり、その反面、私に触ると、汚いものに触れたみたくなったり。
もちろん全員がそれに加担したというわけではありません。ただ、だんだんクラスで私と仲良くすると、自分も被害を受けるというようなムードが確立されていき、私の立場はどんどん小さくなっていきました。
今思えば何でもないようなことかもしれませんが、子供の狭い世界にとって、教室内での存在否定は、生き地獄みたいなものです。そして、子供は自分達の本能的残酷さには気付かないものです。気付かないからやるのです。人の受ける心の痛みに気付いた人から、大人に、そして人間と呼べる存在になっていくのです。そういう意味では、当時私の学年で一番大人だったのが修ちゃんといえるかもしれません。
掃除の時間、私はいつものように男子にからかわれ、遠巻きに見つめる女子には無視されるというような状態でした。その時です。
「おい。これ以上永森をいじめるようだったら、おまえら全員、親父に頼んで、鑑別所いれるからな。俺の親父が警察官だってことは知ってるよな?」
突然、隣の隣のクラスからやってきた男子の一言に、場は静まり返りました。
修ちゃんのことはみんなが知っていました。学年で一番足が速く、勉強もでき、背も高く、剣道の大会で優勝したりして、朝会で表彰されることもありました。何より、かっこよかったので、違うクラスの私達女子の間でも人気があったのです。
「別に無理に仲良くしろとはいわねーけどよ。自分がやられて嫌なことは人にもすんじゃねえよ。おまえらクラスの全員にいっとけよ。それでもまだ続ける奴がいたら俺のところに報告しに来い。直接シメてやっから。わかった?」
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