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鞘火 失われた土曜日 その3
賞の歴史で初のW審査委員賞受賞。
陽の目を見られなかった幻の問題作? が電子書籍で登場。
本作は過去に富士見書房で開催されていた、ライトノベルの賞、
第8回富士見ヤングミステリー大賞で井上雅彦・竹河聖
両審査委員賞を受賞いたしました「鞘火」の改訂版です。
その3。
12章から16章まで掲載。
12日目 土曜日
けたたましく鳴り響く電子音にうながされ、ぼくは寝ぼけまなこのまま、ケータイを耳にあてた。
「おい、これから出かけるぞ。用意しろ」
きこえてきた修平の声は、今日が休日であることを忘れているかのような、ぶしつけな話口調だった。
「うぅ。まだ9時前だよ。どうしたの?」
「おめーは先週俺を7時前に起こしたろうが」
「……どこ行くの?」
「まだ決めてないけど遊びに行く。泊りがけで」
「泊まりなの? 急だなぁ。そういうことは前の日に伝えといてよ」
とぼくは、まだうつろなままの状態で文句をいった。あらかじめ、伝えておいてさえくれれば、あと半刻は寝られたはずだ。
「それはダメだ。こうやっておまえをからかう楽しみがなくなる」
まるで、こっちが間違った意見を押し付けているかのように、修平は即座に否定した。
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