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その手始めとして、ホテルでバイキング形式の朝食を済ませたあと、部屋に戻り準備を整え、最後にキーをフロントに返し、チェックアウトをすませた。
それからロビーのソファーに腰掛け、ちょうどかかってきた修平の電話に従い、俺は、観光雑誌片手に車の到着を待った。
「おまえ、昨日どこで寝たんだ?」
助手席に乗り込んでから、俺はさっそく質問を投げた。
「ん、車のバックシートだよ。その辺の広い無料駐車場に停めてさ」
「ああ、あの寝袋か。なんだよ、ちゃんとしたとこで寝りゃいいのに。ここらへん避暑地だから、今の時期でも夜とかすげー冷えるだろ」
「バカ。昨日おまえが泊まったホテルいくらかわかってんのか? 夕食抜きで二万近いんだぜ。俺だって、財布と相談しながらやってんだよ」
修平はパーマの部分とは明らかに違う、寝癖がついたままの頭をかきながら、ぼやくようにいった。
「そっか、でも、さやかは貧乏だからなぁ。たまにはこういう贅沢なことがあってもいいよな」
「人事みたくいうなよ。まあ俺が誘ったんだから、俺が金出すのはいいんだけどさ」
そういうと、修平は、グリーンガムを口に含ませ、車を走らせた。パラグライダーの体験予約をしていたらしいので、どうやらそこに向かっているらしい。といってもカーナビで案内してくれるので、画面の地図を見ながら音声指示に従うだけだ。
「いいなぁ。俺もそのうち免許とろうかな。運転大丈夫だと思うか?」
「ああ、オートマ限定なら簡単だし、運転自体は大丈夫だと思うよ。教習所も、実技はさやかとおまえだけでこなせば、なんとかなるだろうし」
「けど、実際の道走らせるのは怖いよなぁ」
「まずは原付からだろうな。路上のルールに慣れておかないとなかなか厳しいぜ」
「最近あんま外出かけないからなぁ俺。必要ないといえばないんだよな」
「そうなの?」
修平は心底意外そうな顔でいった。修平が昔のままの俺のイメージを持っているなら、そう思っても無理はない。名前の通り、遊ぶのが大好きで、活発な性格だったからだ。
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