鞘火 失われた土曜日  その4

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 薬のせいもあるかもしれない。  私は、毛布を肩までかけると、そのまま柔らかな朝の闇に飲みこまれていった。 「お、起きた?」  目を覚ますと、修君の顔が目の前にあった。  何かあった時のために一応合鍵は渡してあるので、物理的にはそれも可能なのだけど、あまりに急展開だったので、びっくりするリアクション自体が消滅してしまうくらい、びっくりしてしまった。 「何時?」 「17時ちょっと過ぎ。一応メールはしたんだけどな、反応なかったから来てみた」 「いつからいたの?」 「30分くらい前かな」 「寝てる間シャドウ出なかった?」   「出ないよ。一応、凶器になるもの隠して、いつでも逃げられるような体勢取りながらおかゆ作ってた」  修君は笑いながら、キッチンの方をあごでひょいと指した。  私は額に手を当て、頭のぼやけ具合と同時に確認しつつ、修君の顔を向きなおした。 「まだ熱がひかないなぁ。これってさぁ、きっとあれだよね」 「ああ。シャドウの力が強まってるせいだろうな」 「生理不順になったり、エイチが頻繁に出たりもあるしね。もう確定だね。でも、やっぱり私のとこできたかってかんじ」 「やっぱり?」  修君は、あからさまに首を曲げていった。 「うん。私一見健康そうに見えるかもしれないけど、実はみんなの中で一番免疫力が低いんだ。疲れやすいのも私だし、よく風邪をひくのも私。やんなっちゃう」 「もしかして、エイチが出るのも、樹が一番多い?」 「え、ああ、うん。今まではそんなこといちいち日記に書かなかったし、ちゃんと数えたことはないけど、私は多い方なんじゃないかな。ちょっと待って、さやかに確かめてみる」  私はそういってから、副人格のさやかに呼びかけた。 なぜだか病気の時のほうが感覚が高まり、こういったやり取りはより集中的にできる。座禅を組む僧侶のように、余計な意識を外に追い出せば出すほど、さやかが考えたことが、明確に私に伝わる。とはいえ、細かい記憶や風景描写ではなく、データ集計のような作業だから、結果さえ出れば過程はそんなに重要ではない。
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