0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのね。ワッカがいなくなってから、ここ一年くらいでいえば、やっぱり私が一番多いみたい。その次がさやかだけど、これは曜日を二つ担当してるから確率的に増えただけであって、半分にしたら、他のみんなと変わらない数字。あっ、でも遊は一人だけ少ないかな。何回かとかはきかないでね。だいたい私は3倍程度の確率みたい」
「……そうか、そういうことだったのか」
修君は途端にシリアスな表情になって爪を噛んだ。
「どういうこと?」
「つまり、潜在的に一番スケベなのは樹ってことさ。エイチもそれがよくわかってるんだ。スケベとスケベは磁石のように惹かれあうからな」
「はあ? 何いってんの。こんな時に冗談はやめてよね」
私はベッドの上にあったクッションを勢いよく投げつけていった。
「それだけ元気がありゃ、おかゆじゃなくても平気だったかな」
「うん。でも温めればいいだけだから助かる」
「今食べる?」
「少しだけ」
修君はコンロの火を調節し、鍋の中身を茶碗に盛ると、れんげや、グラスに注いだウーロン茶を乗せたお盆の上に乗せて持ってきてくれた。
「いただきます」
私はれんげに盛ったごはんをフーフーさせながら、口の中に運び、何回か噛んでから飲み込んだ。
「美味い?」
「んー、正直薄いかな。梅干冷蔵庫にあるから、取ってきてくれる?」
「はいよ」
修君を使い走りに、なんだか、つかの間の女王様気分を味わいつつ、私は梅干を2つほど潰してかき混ぜた。その作業をしてるだけでも、条件反射的に口に唾がたまった。
「なるべく自然な状況を把握したいから、食い終わっても薬は飲まないで過ごしてくれ。どうしても苦しい状況になったら仕方がないけど」
と梅干の箱を冷蔵庫に戻してから、修君はいった。
「わかった。さっき飲んでもあんまり下がらなかったし、我慢できない状態じゃないから」
「そっか、ならよかった」
「はぁー、それにしても、最後かもしれない晩餐がおかゆとはねぇ。ダ・ヴィンチもがっかりだ」
「あの絵だって、そんなたいしたもん食ってるわけじゃないぜ。パンと葡萄酒と魚かなんからしいよ。けど、誰かが裏切るかもしれないという設定だけは似てなくもないか」
「んー、そういわれてみると、なんか、おかゆが神聖な食べ物に思えてきた。逆に質素だからこそみたいな」
そんなふうにくだらないやりとりを交えつつ、私は茶碗半分のおかゆを完食した。
最初のコメントを投稿しよう!