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中学の時も、高校の時も、私は修学旅行には参加しなかった。というか、高校は、修学旅行自体がない珍しい学校だったし、中学の時は、日程的に、3泊4日で、土日を挟むということもあり、ワッカと遊じゃ、うまくこなせないだろうという判断を下し、直前に仮病を使って休むことにしたのだ。だって、もし遊が、年頃の女の子達と一緒に、お風呂に入ったり、隣の布団で寝たりしようものならと考えると、想像しただけでも恐ろしい。ワッカにしたって、普段の土曜日は学校が休みで、クラスメートと顔をあわせるような機会もほとんどなかったから、溶け込むのは難しかっただろう。
「じゃ、行ってくるわ」
「行ってらっしゃい」
海軍式の敬礼ポーズで、修君を送り出すと、私は日記を取り出し、早めに今日の出来事を記すことにした。基本的には寝ていただけなので、書く事はそんなに多くはない。
(私が修君のことを異性として好きなのかどうかは、結局よくわからなかったけど、修君は間違いなく、私の親友だし、青春そのものだったよ。出会えたことを神サマに感謝してます。もし、その気持ちだけを覚えたまま、消えれるのなら、まんざら悪いことばかりでもないのかもしれないね。傷つき悩むのは、むしろ残されるほうなのかもしれない)
日記には書き記すことのできなかった想いを抱え、私はゆっくり目を閉じた。
(……ゴメンね。眠くなる限界まで、修君の傍で過ごそうと思ったけど、やっぱり起きていられそうにないや。もし、これが最後だとしたら、ありがとうも、さようならもいえないままかもしれないけど、怒らないでね修君。ああ、もう一度だけ顔見たかったなぁ。声がききたかった)
最低限の義務を終え、緊張感が抜けたせいか、途端に異常な眠気に襲われ、朦朧とする意識の中、私は最後に、もう一つの自分の心に触れた。
(さやか、あとは任せるね。たぶん、今週の私達と、来週の私達では、状況がぜんぜん違ったものになると思うの。感覚的にわかるの。でも、どんな状況になろうと、くじけないでね。私がまだ生きていたら、必ずあなたを支えるから。それじゃ、私、もう眠るね)
その呼びかけに、さやかが、しっかり頷き、バトンを受け取ってくれた気がした。
それを確かめた私は、もうすぐ消えそうな意識を振り絞って、しっかりと微笑み返した。
18日目 金曜日
「熱はひいたか?」
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