灼熱の大地と襲われた姫君。

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広大な台地、地平線まで広がる草原を走る三人。 「・・・そろそろゲート付近だな。」 「そういやツムグさん、ゲート通った時どんな感じでした? 俺達の時はなんかすっげえでっけえ黒球になってたっす。」 「・・・本来ゲートなどというものが安定するはずもないからね。 一瞬で生まれ、一瞬で消える。それがゲートの普通なんだよ。 だから僕の時はまるで違う大きさだった。 だいたい大扉ぐらいの大きさの黒球。 ちょうどほら、あのぐらいの大きさ・・・?」 はるか先の黒球を指差すツムグさん。 言うとおり、大扉ぐらいの大きさだが・・・。 遠近法を無視すればの話。 「・・・ずいぶん成長したみたいだよね。あはは。」 ゆかりが引きつった笑顔を見せる。 「・・・もう少し近くに寄ってみよう。」 草原を駆け抜け、黒球の所へと向かう。 黒球は当然、近くで見れば見るほどにでかい。 でかいというか、近くで見ると目の前だけ夜になっているようにしか見えない。 「・・・元々、ゲートってのは時空魔道震という現象の別名。 だが、ここまで巨大化するとは・・・。」 ふらふらと近寄るゆかり。 「危ないっ!これ、縮んだり伸びたりしてるぞっ!」 ゆかりの手を引き、抱き寄せる。 「あ、ありがと。」 「い、いや。別に。」 近くで見つめ合ってしまい、照れて離れる。 「・・・初めてツムグさんがゲートくぐった時はどのくらいの大きさ?」 「茶ドア程度だな。屈んで入るくらいのドアだ。腰辺りまでの。」 「茶室の入り口のこと?よくそんなこと覚えたね。」 「アキラに教わった。ワビィサビィとかそんなの。日本の心だって。」 「へぇぇ~。」 名残惜しそうに黒球を見上げるツムグさん。 「・・・なぁ、ツムグさん。このまま地球行っちゃえば? あとは南に下るだけだしさ。地図も黒炭王からの手紙もあるし、俺達だけで。 なぁ?」 「うんうん。そうよね。アキラさんも淋しがってるんだしさ。地球帰ったら物凄く長い距離旅しなきゃならなくなるんだもん、早いほうがいいんじゃないの?」 俺達の言葉に一瞬逡巡し、すくに首を振るツムグさん。 「・・・さすがにそこまで無責任なのはね。 ちゃんと南の居住地に行ってからにするよ。気を使わせてごめんね。」 弱々しく笑っている。
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