灼熱の大地と襲われた姫君。

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そしてまた南の居住地に向けて走り出す三人。 黙々と走るツムグを追う。 ゆかりが隣に並ぶ。 「ねえ。ツムグさんさ。結局会いたいのかな、会いたくないのかな。」 「う~ん、会いたいんだろうけどな~。なんかよくわかんねえんだよな~。」 「ねぇ~。」 その後もひたすら走り続ける旅が続く。 日が落ちて野宿をし、日が登ってまた走り始める。 やがて景色に変化が見られるようになる。 草原が続いていたのが、岩場が増え始め、草木も減っていき、荒涼とした光景が広がっていく。 「ナンプウトカイテハエまでもう少しだ。 この南の居住地はね、溶岩地帯の真ん中にあるからかなり暑いけどがんばるんだよ。」 「暑いほうが好きなんで大丈夫っす!」 元気よく返すエニシ。 「暑いの嫌い~。」 げんなりするゆかり。 「ゆかり、寒いのも嫌いじゃん。」 「・・・暑いのも寒いのも嫌い。 だけど、そういういらないツッコミするエニシはもっと嫌い。」 どんがらがっしゃぁぁぁん!! 岩に蹴躓き、ド派手に転ぶエニシ。 「・・・あんまり嫌いとか言わない方がいいよ。 好きな人に嫌いって言われたら傷つくだろ。」 ぼそっとツムグが呟く。 はっとし、走るのを止め、振り向くゆかり。 その視線の先には立ち上がるエニシ。 「・・・き、嫌いの反対っ!!」 一言叫び、また走り出す。 まったく。素直じゃないなぁ。 そう思いながらゆかりを追うツムグ。 しかしエニシ君が銀月病を治療するまではもう少し素直でラブラブだったような気がする。 ・・・何かあったのか? ひゅん。 ツムグを追いかけ、ゆかりに並ぶエニシの背中はウキウキしているようだ。 こっちはこっちで超素直だし。 ・・・若いっていいもんだな。 ふと感じた思いが、自分が酷くおっさんであるかのように感じさせ、顔を一振りし、二人に続く。
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