灼熱の大地と襲われた姫君。

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やがて見えてきた、黒く歪な山。 火山。それも絶賛活動中。 天高く炎を吹き上げ、盛んにマグマを吹き上げている。 見渡す限り黒一色に染まった大地は訪れる者を拒むように所々でやはりマグマを吹き上げている。 「見えてきたぞ。あの山の麓だ。」 じゅうじゅうと音を立て続ける水のベールの中でツムグさんが口を開く。 三人共にゆかりのかけてくれた水のベールに包まれている。そうでもしなければ到底耐えられる暑さではないのだ。 「ほ、本当にこんな所に人が住んでるんですか?」 「ああ。あの山の麓に温泉の湧き出ている所があってね。 そこを中心にして人が生き長らえているんだ。 まぁ当然居住地周辺に水壁を貼り続けたうえで、なんとかかんとか騙し騙し生きているんだけどね。」 「・・・その分銀月魔物も寄ってこないってこと?」 「そう。過酷過ぎる環境だからこそ、銀月魔物からは守られているんだ。」 「こっちはこっちで灼熱地獄か・・・。 人口はどのくらいなんですか?」 「一万満たないくらいだろう。爬虫人類を中心として、ドワーフなどが主に住んでいる。 彼らは他の種族に比べて熱に対する耐性が高いんだよ。 逆に母さんみたいなエルフ達は暑さに弱くてね。ここに長くは住めないだろう。」 「なるほど・・・。だから北と南に別れる羽目になっちゃったんだ。」 「そうだね。 人々が銀月魔物に追われて最終的に行き着いた場所がキューバッサとナンプウトカイテハエなんだ。 ・・・ずいぶんと人が死んだよ。 幾たびも銀月との戦いが繰り返され、幾たびも滅亡の危機に晒され、そして辿り着いたのが今の現状というわけだ。」 「・・・銀月治療すれば少しはマシになりますか?」 「・・・無駄、ではないよ。 少なくとも希望は与えられる。」 「はい。」 ゆかりは二人のやりとりを聞きながら感じていた。 エニシに宿る灼熱を感じ取っていた。 エニシは完全に、露骨に、明白に銀月を敵と見なしている。 訳の分からない現象、訳の分からない病気。訳の分からない敵であろうとも、それを敵と認識し、戦うつもりなのだ。 ・・・エニシの中ではまだまだ片付かない問題なんだよな~。 踏ん切りも、ここで終わりという終着駅も見つけられない、そういった事柄なのだ。 ・・・だったら二人の問題は、無理やり進めちゃおっかな。 ふへへ。
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