灼熱の大地と襲われた姫君。

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しばらく進むと確かに火山の麓に青く覆われた何かが見えてきた。 よく見るとそれは巨大な水フィールドで、その奥に金網のような塀に囲まれた平屋建ての建物がひしめき合うように建ち並んでいる。 「ここはね、使える土地が限られてるから。だから密集してるんだ。」 「へえ~。」 走るのを止め、歩き始めたツムグさんに習い、後ろについて歩く。 水の巨大ベール越しにゲートっぽい所へと回り込む。 「こんにちはーー! キューバッサからの使いで参りましたーー! 王位第一継承者、ツムグですーー! 上に取り次いでもらいたいーー!」 さすがにいきなり入って行くようなことはせずに、ゲート前で待つ。 ゲートが開き、ぞろぞろと出てきたのは・・・。 「お・・・おおおっ!?トカゲさん達っ!!」 「やっべぇっ!!異世界やっべぇっ!!」 途端にテンションが上がる。 水の巨大ベール越しに見えるそのトカゲさん達は言ってみれば直立二足歩行のトカゲさん。足が短めで代わりに太い尻尾がゆっさゆっさしている。 「こ、こら、君達失礼だろ。 すいません、この子達異邦人なものでなんでもかんでも珍しいんですよ。ははは。」 ずぅ。 ツムグさんに突きつけられた槍の穂先は鋭利に鈍く光っている。 少し引くツムグさん。 「・・・そこの子ら、異邦人と言ったな。 ミカオという者を知っているか?」 「ミカオっ!?お父さんっ!?」 ゆかりが思わず叫び、そして口元を押さえるがもう今更である。 「ばか・・・。」 額を押さえるのはエニシ。 ずぃ。 もう二本。水のベールを貫き通し、伸びてくる槍の穂先。 「・・・どうやら知っているようだな。 ツムグ殿。 貴殿には悪いがそこの子ら、拘束させてもらおうか。」 水のベールを抜け、10人程のトカゲさんが俺達を囲む。 両手を上げるゆかり。両手をだらりと下げる俺。 「・・・待て。両者共にだ。待て。 エニシ君、ゆかりちゃん。暴れるのは事の次第を知ってからでも遅くないだろ? 門番諸君、この二人、強いぞ。俺に近いだけの実力がある。 さらに・・・喧嘩っぱやいから。無理強いされるの嫌いだからな。だから止めとけ。 まぁまずは何があったのか話してみてよ。」 いつでも飛び出せる体勢を維持しながら心の中でツムグさんに拍手する。 さすが大人だ。
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