灼熱の大地と襲われた姫君。

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「ごほんごほん。 ええ~、話が纏まった。 まずそこの人間のお嬢さん。あなたの父親が取った行動からお伝えしよう。」 隊長さんが部下を諫め、また代表で前に出てくる。 「お、お願いしますー。」 ゆかりが頭を下げる。 「まず彼がこの地を訪れたのは今から一週間程前だった。 始めは消耗していたのか、足元も覚束ない様子でね。外の世界で奇跡的に生き延びていた人間がここまで辿り着いたのかと、喜んで出迎えたのだ。 しかしね、彼は我らの好意を踏みにじった。ゆかりーゆかりーと叫びながら興奮しだし、しまいには大事な話があるから上の者だせ、などと言い出す始末。 当然そんな挙動不審者をほいほいと招き入れる訳にもいかないからここで押し問答している内にね。 ・・・暴れ出して。 我ら門兵数十人を纏めて引きずり回し・・・。 そして我らが姫の所まで押しかけ、かっさらい、何事もなかったように姫を返して去っていったのだ。 ・・・本当に悪夢のような数日間だったよ。」 疲れが戻ってきたかのように、肩を落とす隊長さん。 「な、なんかうちの父がすいません。 そ、それで父はお姫様に何て言ってたんですか?」 「それは私にはわからない。姫だけが知っていることだ。」 「そうですか~。ありがとうございます。」 「それじゃこっちの情報伝えますね。 まずは銀月。銀月病を完全に治せる人材が現れた。まぁそこの彼なんだけれども。 それで彼の好意もあり、直接ここを訪れたというわけだ。 ・・・あとは姫と直接会って話すことにするよ。」 そう言ってニヤリと笑うツムグさん。 ざわざわと門番達がざわめき出す。 さらっと軽く言ってるけど、銀月病についてだ。内容は重い。重い上に重要な判断を現場の兵士に求めている。 ・・・あ、もしかしてツムグさん、何気に怒ってる? まぁそりゃそうだよな。いくら俺達コブ付きとはいえ、一国の王位第一継承者が名乗ってるのにも関わらずこんな扱い受けたんじゃ、イライラもするか。 「ということで僕は姫との面会を求める。ことは一刻を争うし、何より僕自身に時間がない。 もう一度言うよ? 取次を。 できなければ、わかってるね?」 ごぅ。 ツムグさんの纏っていた空気が変わる。 見る見るうちに張り詰めていく雰囲気。
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