灼熱の大地と襲われた姫君。

25/31
前へ
/780ページ
次へ
ガリガリガリガリ。 エニシ君の頭を掻く音が妙に響く。 「・・・マジでそう思ってんの?」 「なにがだい?」 「利用しただけの関係だってさ。」 「・・・だってそうだろう。言葉を覚え、風習を覚え、世界に馴染むために溶け込ませてもらった。 ・・・僕は・・・彼女に何も返さずに。 帰ってきてしまった。 ・・・帰ってきてしまったんだ。」 重い沈黙が部屋を支配する。 何も言わないエニシ君。 何も言えない僕。 やがて、エニシ君が口を開く。 「あ~~。龍二が~~。 龍二が俺に憑依する~~。 龍二の魂が~~。 今は亡き龍二の魂が~。 俺を襲う~~~。」 突然震え出すエニシ君。 「ど、どうしたのっ!?大丈夫かい?」 「ダメだ~~。限界だ~~。」 がくん。 エニシ君の頭が下がる。 「え、エニシ君っ!?エニシ君っ!?」 その肩を掴み、揺さぶる。 ・・・何か、呟いている? オンナ・・・ナメンナ・・・? アキラサン・・・ナメンナ・・・? がっ! いきなり上がる顔。 その目は悪戯げに笑っていて。 「アキラさんっ!舐めんなぁぁぁっ!!」 どがぁっ!! いきなりの衝撃。壁に叩きつけられ、頬の痛みで殴られたことに気付く。 ずる。 効いた。眩む。壁にもたれかかる。 どぐしゃあっ!! 顔面中央に拳がめり込む。 「アキラさん!舐めてんじゃねえぞぉぉっ!! 俺の母ちゃんっ!!舐めてんじゃねえぞぉぉっ!!」 どがっ!ばきぃっ!めしぃ! 容赦なく打ち込まれる拳。 ぐっ!!このぉっ!! しゅるるるっ!すぱぁっ!! 僕の糸により、ズタズタに切り裂かれるエニシの腕。エニシ?龍二? 「この程度でっ!エロガッパが止まると思ってんのかぁぁっ!」 どごぉぉぅ!! 回転後ろ回し蹴りが鳩尾にめり込み、呼吸が止まる。 「俺はっ!!言ったかどうだか知らねえけどっ!!言ったよなぁぁっ!!」 前蹴り。顎を打ち上げられる。 「アキラさんを利用したらっ!悲しませたらっ!苦しめたらっ!てめえただじゃおかねえって言ったっぽくねぇえっ!?」 打ち下ろしの右が喉にめり込み、潰される。 「おらぁっ!!なんか言ってみろなぁっ!! このチキン野郎っ!!」 胸倉を掴まれ、持ち上げられる。 喋れない。 「がぁっ!!」 僕の五本指糸が龍二の前面を五つに切り裂く。 吹き飛ぶエニシ=龍二。
/780ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3905人が本棚に入れています
本棚に追加