灼熱の大地と襲われた姫君。

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まずいっ!いかに非常事態とはいえ手加減無しでやってしまった! 吹き出る鮮血。 額から足の先まで盛大に切り裂かれながらも、立ち上がるエニシ。 「・・・ぐ。がはっ! ど、どういうつもりだ?エニシ。」 「・・・言ってんだろうが。 俺はエニシじゃねえ。龍二だ。」 ずちゃ。 ずちゃ。 ずちゃ。 自らの流した鮮血に足を染めながらも歩みを止めない。 「りゅ・・・うじなら・・・言ったはずだ。 惚れ合った二人が・・・上手くいかなくて・・・別れんなら・・・しょうがねえって・・・。」 ついに、俺の僕の前まで辿り着く。 その血まみれの両手が、俺の肩に伸ばされる。 「・・・だけど・・・だからこそ・・・どっちかのせいじゃねえ・・・って。」 「うおおわっ!」 目の前の、僕より遥かに弱い少年に恐怖し、振り払い、背を向けようともがく。 がしぃ。 腰を取られ、もがく。 「だけど・・・。 勝手に自分の中だけで・・・。 勝手に決めつけて・・・。 終わらせるのは逃げだって・・・。」 もがく。 まるで、自らの弱い心から逃れるようにもがく。 だが・・・。 そのボロボロの身体のどこからそんな力が出るのか。 あるいは本当に龍二が憑依しているのか。 剥がれない。 剥がせない。 ぐっ。エニシの腰が下がる。 「男だったらぁぁぁぁっ!! てめえの惚れた女にぃぃぃっ!!」 少しずつ持ち上がる僕の身体。 必死でもがく。 だが。 少しずつ、少しずつ、持ち上がっていく。 「一直線だらぁぁぁぁぉぉぉぉっ!! んんんん魂のぉぉぉぉぉっ!! ジャァァァァァァマンっ!!」 どごぉぉぉぉぉぉぉん!!
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