失った恋

22/31
1730人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
はぁー…。 自分のデスクに戻ると、大きく溜息を吐いた。 「ちょっと、明。そんな大きな溜息つかないでよ。こっちまで暗くなるわ」 隣のデスクで呆れた顔をしてそう言うのは、同期入社の伊藤亜紀(いとうあき)。彼女とは辛い時や困った時お互いを助け合う仲だ。 「ごめん…。何か疲れてる…」 「あんた、何かあったでしょ。やつれてるし」 亜紀は結構鋭い。 私の少しの変化も、彼女は簡単に見破ってしまう。 この前なんか私が資料の確認ミスをしてしまって、それがあまりにも初歩的なケアレスミスだったことから、上司からこっ酷く怒られたことがあった。 その日、亜紀は風邪を引いて会社を休んでいたから、その出来事なんて知らないはずだった。 しかし、次の日出社した亜紀は私の顔を見るなり、開口一番に『明、昨日何かあったでしょ』と言ったのだ。 時々、私は本気で亜紀はエスパーや超能力者じゃないかと疑ってしまう。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!