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「伊藤さん遅いね。適当に頼んどくか」
「そうですね…」
「すみませーん、注文お願いします」
主任が店員さんに注文をしてくれている間も、運ばれてきた二つのビールで主任と乾杯した時も、和也のことが頭から離れなかった。
ビールを飲む主任を和也と重ねてしまってる自分に気付いた時は自分でも心底驚いた。
「やっぱ仕事の後のビールは格段に上手いな」
「そうですね…」
バカだな…私。
何で振られちゃったんだろうなんて、今更考えても仕方ないことなのに。
ただ五年という年月は簡単に終わるには重すぎる年月で、あまりにも思い出が多すぎた。
忘れようとしても、考えないようにしても、彼は私の頭からそう簡単に出て行ってはくれない。
「ごめんなさい。仕事片付かなくて、遅くなっちゃいました」
ちょうど私たちの会話が切れた時、亜紀が私たちのもとへようやく到着した。
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