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金曜の夜の駅前は、他の平日に比べて騒がしく、スーツを着たサラリーマン風の集いや私服の大学生っぽい人達で賑わっていた。
人の間を縫うように抜けて、私は亜紀に指定された居酒屋に入った。
「明ー。こっち」
私が店内に足を踏み入れると、入り口の左斜めにある四人掛けの席から声がして振り向く。
振り向いた先にいたのは、タバコを吸いながらこちらに手を振る新村主任。
主任はまだ何も頼んでいない様子で、テーブルの上には水とおしぼりが寂しくのっているだけだった。
「早いですね。営業回りどうでしたか?」
「まぁまぁかな。契約はとったけど」
「へぇー…」
やっぱりこの人、仕事だけは出来るみたいだ。性格は問題ありだけど。
新村主任は片手でスマホを操作し、もう片手でタバコを吸っている。
その姿はかなり様になっていて、まるで、一枚の絵のようだった。
この容姿と仕事ができることが、この男のモテる理由なんだなと思う。
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