俺様、セバスチャン。

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 俺様は春ってヤツが苦手だ。  特に、こう桜の花びらがひらひらと舞い落ちる時期になると、嫌でも思い出しちまう。  飼い主どもは俺様のことをそうとう気味が悪いと思ったのだろう。  俺様だって、どうしてこんな事ができるのかさっぱり分からないんだ。  知っているヤツがいたら教えてもらいたいくらいだ。  あの日の恐怖は今でも忘れられずにいる。  まぁ、俺様が兄弟の中で一番最後まで貰い手がなかったのも原因の一つなのかも知れない。  長い間、毎日のようにリビングでテレビなどを面白がって見ていた俺様は、すっかり人間の言葉を覚えてしまった。  『お座り』や『お手』なんて類は、俺様からすれば単純で人間から見下されたつまらない言葉だ。  だから、貰い手が見つかるまで毎日練習するのが面倒でつい言ってしまった。
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