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「チッ。今日も練習するのかよ」
あの日、俺様が最初に口にしたのはこんな台詞だった。
それから、こうも言ってやった。
「俺様は毎日練習しなくても大丈夫なんだ。だって、もうなんだってできる。そうだろう?母さんからも言ってくれよ」
俺様はあの日の母の顔を忘れはしない。
飼い主どもの驚きの顔は、その顔に比べたらまだまだ悲しいものではなかった。
『お前、何を言っているの?』
母は明らかに怯えていた。
俺様達は「ワン」と鳴いて人間とコミュニケーションを取る。
にも関わらず、俺様は人間と同じ言葉を発した。
母からすれば、俺様は異質で随分と恐ろしい存在だったのだろう。
ただでさえ、血統書付きの誇り高き母は、いつまでも貰い手がなく最後まで残り続ける俺様を毛嫌いしていた。
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