俺様、セバスチャン。

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 昨日降った雨をこんなに憎いと思った事はなかった。  水嵩は増して、ゴーッという音を響かせている。  この時、どれほど弁明したいと思ったか。  躾の為に無駄に吠えないようにと存在するマスクも憎らしいと思った。  だって、そうだろう?  俺様は飼い主どもと同じ人間の言葉を話す事ができる。 「お前らの事は何も言わない。人間の言葉だって一生話さない。目の前から消えろと言うならば、このままこの山奥で暮らしたって良い。お前らには迷惑をかけるような事はしない。だから、このまま見逃してくれ!」  そう叫び、何遍だって頭を下げる事もできただろう。  それが許される事もなく、発泡スチロールの箱から出される事もなく、マスクを着けられたまま、ゴーッと唸る川に放り出された。
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