序章

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序章

 かの大戦争は、この広大な土地全てを焼き尽くし葬り去った。残された人々は敵味方関係なく強く願う。もう、このようなことは繰り返してはならないと。  そして世界は再生を求める。  国などと区分してしまうからいけないのだと結論に達した残された人々は、世界を一つの国とし、元々存在していた国を街とおいた。戦争の激戦区であった場所にはどの街の所有物でもなく、どの街の者でも自由に使用出来る庭園を作り、そこを国会議場とした。  国会議場では各街の代表が集まり、様子を報告しあう。国として特別な強制力を発揮することはない。ただ、話し合う。基本的に各街はそれぞれに自治を行い、国としては無干渉でいた。  国が決めるのは、規則などという堅苦しいものではない。共通認識、それだけだ。  ただ、「世界的永久的平和願」という本を国は所有した。これは、人々の願いそのものだ。また、唯一の街間における決まりを定めたものでもある。  ――街は、現在定められた土地を拡大しようとしてはならない  ――街は、他の街を何によっても縛ろうとしてはならない  ――街は、他の街と特別な協力関係になってはならない  ――街は、他の街と一つになってはならない  ――街は、他の街に意見してはならない  ――街を選ぶのは住民の自由である  国は、街を統括するようなことをしてはならない。ただこの書を保管し、各街の様子を報告する場であれ。目的は、共通認識を広め、いらぬ誤解を生まぬようにすること。そして、かの大戦争を再び起こさぬことだ。  かの大戦争を永遠に忘れない。  これが我々残された者たちの強い望みである。
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