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緊張で壊れそうな心臓を深呼吸して抑えながらドアに近づく
『どちら様ですか?』
「お約束していました山田です」
電話で聞いていた名前に少し気を緩めてドアスコープを覗いた
歪んで見えてるから、ちゃんとは顔が判らない
こういう場合、どんな相手が来るか判らないところが弱点だ
ムリをしてここまで来てもらうんだから仕方がないけど
震える手でドアを開けると、まず目に入ったのが喉元
俺より背が高いんだななんて思いながら、少しずつ顔を上げ相手の顔を見たところで動きが止まる
信じられない思いでその顔を見ていた
相手も俺を見て固まっている
――知らない相手じゃ、ない…
山田なんていうのは偽名だ
彼は赤西という名前
しばらく呆然と見つめ合っていたが、先に我に返ったのは相手の方だった
「入れてくれないの?」
柔らかい声で言いながら俺を中に押し、自分も部屋へ入ってくる
動けずにいる俺の手を引きながら奥に移動した
自分はベッドに腰掛けて俺にも座るように催促する
相手の正面より少し場所をずらして、椅子に座った
すると自分も俺の正面に座るように場所を移動してくる
狭い部屋だから、ベッドと椅子の距離はこれ以上離れられなかった
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