第1章

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緊張で壊れそうな心臓を深呼吸して抑えながらドアに近づく 『どちら様ですか?』 「お約束していました山田です」 電話で聞いていた名前に少し気を緩めてドアスコープを覗いた 歪んで見えてるから、ちゃんとは顔が判らない こういう場合、どんな相手が来るか判らないところが弱点だ ムリをしてここまで来てもらうんだから仕方がないけど 震える手でドアを開けると、まず目に入ったのが喉元 俺より背が高いんだななんて思いながら、少しずつ顔を上げ相手の顔を見たところで動きが止まる 信じられない思いでその顔を見ていた 相手も俺を見て固まっている ――知らない相手じゃ、ない… 山田なんていうのは偽名だ 彼は赤西という名前 しばらく呆然と見つめ合っていたが、先に我に返ったのは相手の方だった 「入れてくれないの?」 柔らかい声で言いながら俺を中に押し、自分も部屋へ入ってくる 動けずにいる俺の手を引きながら奥に移動した 自分はベッドに腰掛けて俺にも座るように催促する 相手の正面より少し場所をずらして、椅子に座った すると自分も俺の正面に座るように場所を移動してくる 狭い部屋だから、ベッドと椅子の距離はこれ以上離れられなかった  
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