パンダ課長

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言われるままに叔父の会社に就職し、今年で十七年勤続になる。 四十歳。 もう、いい歳をしたおじさんだ。 夢を追い掛けるには、もう遅い。 ただ、何となく日常を過ごし、会社と自宅とを往復する毎日。 気が付けば、人生の半数近くを生きていた。 人生をやり直す分岐点すらもうない年齢で、この『何の生き甲斐もない生活』というのを受け入れ、抗う事は、とうの昔に諦めていた。 そんな時に耳に入ってきた、『パンダ課長』という呼び名……。 三年前には、この呼び名の事は知っていた。 それが、自分の事を指す隠語だと知ったのは、つい最近……。 三ヶ月前だ。 仕事が全然出来ないのに、社長の甥というだけでチヤホヤされ、ぞんざいな扱いが出来ない。 厄介な存在で、お飾りな上司。 『仕事なんてしなくていいですから。ただ、ニコニコと笑って、社長の機嫌を損ねなければ、それでいいです』 そんな皮肉が込められた呼び名らしい。 最初は、ただの妬みとか、嫌がらせだろうと思っていた。 それが……。 ある一人の部下により、それがただの嫌がらせなどではなく、真実だという事が判明した。
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