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「ずっと、あなたが好きでした」
中学の卒業式。桜の木の下。
周りには誰もいない。きっと遠くで、写真を撮り合っているのだろう。
本来ならその中心にいるはずの人物が、今、俺の目の前に立っていた。
3年間思い続けたその人が、俺の告白を受け止めて、こちらを見つめ返している。
「…………」
この言葉を告げるのに、どれだけかかっただろう。
どれだけの勇気が必要だっただろう。
もう、後戻りは出来ない。逃げることは出来ないんだ。
俺はせめて、相手の瞳をじっと見つめ返し、答えを待った。
「……ありがとう」
出てきたのはその言葉と、
「ごめんなさい」
その、言葉。
「…………」
分かってた。なんて言ったら強がりに聞こえるだろうか。
でも本当に分かってたんだ。ただ、自分に区切りをつけたくて。ずっとこのままじゃ、前に進めないだろうからって。
器用な奴なら、相手が自分に惹かれてきたと感じた時に告白するんだろう。でも俺には、そんなこと出来なかった。
不器用だから。
「……そ、そっか」
だからこの時も俺は、不器用に愛想笑いを浮かべて。知ってたよ、当たり前じゃんなんていう表情をして逃げようとした。
――その足が止まる。
「……え?」
泣いていた。
目の前の少女は、目に涙を溜めながら、こちらを見つめ返していた。
「……あ、え?」
状況が分からない。こちらが泣くことはあっても、向こうが泣く理由はないだろう。
告白が嬉しかった?いやそんな馬鹿な。てかそれなら振ったりしないだろ。もしかしてやむを得ない理由?いやそんなわけないというかまだ俺は告白が成功する気でいて――
「あ、ありがとうね!」
パニック状態に陥った俺は、意味の分からないお礼を言って、その場から逃げた。
答えは貰えた。自分なりに区切りをつけた。
そのはずだったのに。
心の中は、もやもやで一杯だった。
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