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恋の終わりは、どこにあるんだろう。
フラれた時から?違う。
会えなくなった時から?違う。
自分が諦めた時から?違う!
「恋の終わりなんてもんはなあ、ないんだよ!」
とある居酒屋。チェーン店なだけあって辺りはうるさいほど賑わっている。
既にビールを3杯、日本酒を2瓶たいらげた俺は、目の前の友人に向かって語っていた。
「いいか、途中で読まなくなった小説があるだろ?」
「はあ……」
「そいつにしおりを挟んで、棚に閉まったとする。それと同じなんだよ!」
友人は、意味が分からないといった風に、眉をひそめた。
「つまり、開けばいつでも物語は始まるってわけだ。お前が終わりだと思うそれはな、ただ休んでいる。休憩しているだけなんだよ」
「…………」
「分かったか!?」
友人はハイボールに口をつけ、その後ため息を吐いた。
「なあ、透哉(とうや)。お前みたいなやつ、世間では何て言うか知ってるか?」
「あん?」
「ストーカーだよ」
「な……!」
聞き捨てならない。こんな、聞こえによっては詩的にも思える持論を、あろうことかストーカーの一言で片付るなど。
「ストーカーだと? ふざけんな。これはな、純愛なんだよ!」
「そう、ストーカーはみんなそんな風に言うんだ。俺の恋は純情で真っ直ぐ。だからきっといつか振り向いてくれる。振り向かないのは、努力が足りないからじゃないか」
友人――秋人(あきと)は、可哀想な目で俺を見た。
「でもそれは間違いだ。お前は負けを認めたくないがために、終わった試合を一人で続けているに過ぎない」
「そ、そんなこと……」
「恋愛ってのはな、才能なんだよ」
秋人は眼鏡をクイッと上げ、パーマのかかった茶色い髪を指で遊びながら話した。どうやら負けじと持論を展開するらしい。
「スポーツ選手と同じさ。ある程度の才能がなきゃ、夢の舞台には立てない。もちろん努力も必要だぜ? 恋愛でいうと、アプローチだな。でもこれも、才能の上に成り立っている。容姿、雰囲気、喋り方……。つまり相手が少しでも好意を抱いてなきゃ、いくら想っても無駄ってことさ」
「さい、のう……」
「お前だって、嫌いなものを押し付けられて努力しろ、なんて耐えられないだろ?」
確かに小学生の頃は、親に入れられた野球クラブが嫌いで、辞めたがっていたっけ……。
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