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俺がフミを連れてやって来た場所は、使われていない空き部屋。
元々は美術室だったのだが、最近になって違う部屋に移動された事もあり、誰も来やしないだろう。
長年使われ続けた絵の具独特の匂いが染み付いた部屋は、少し薄暗かった。
「…ちぃちゃん?」
未だ状況が分からないフミが、俺の名前を呼ぶ。
下を俯いていた俺は扉の鍵を閉めて、ぐっと唇を結んだ。
「…フミ
お前今、す…好きな奴…いる?」
「…好きな人?」
「あ、いや…っ
それより…その…!!」
…だああああ!!!
もう、しゃらくせぇえええ!!!
勢い良く顔を上げた俺は、壁際に立っていたフミに歩み寄り。
その顔の横に手を突いて距離を縮めた。
「 フミ
俺と付き合え」
長身のフミを見上げて、シャープな顎に指を添える。
艶のある柔らかそうな唇は少し開いていて。
長い睫毛の下から覗く瞳は、ふるっと震えた。
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