あなた一体、誰ですか?

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フミの背中の服を掴んで後ろに引っ張るが、全く離れる気配がない。 いよいよ乱心(?)創痍した俺は豪快に涙を流した。 「ふ…ぐっ、うぅ…」 「……」 目の前で泣かれて、挙げ句 鼻水まで垂らす俺に、ようやっとフミは引き下がる。 俺はというと、体の力が抜けて地面に突っ伏してしまっていた。 その姿はある意味 土下座に近い。 「ぶぇぇえええっ…! ぅあぁあああああ!!」 「…豚か、お前は」 「ふ、フミが豚って言ったあああ…っ!!?」 「…はぁ」 溜め息を溢したフミは、俺の頭元に屈んで何やら悩ましげ。 でもはっきり言うぞ? 俺の方がどうしようもなく悩ましげだ。 「…なあ、千歳」 「フミは千歳って言わないぃい…!!」 「はいはい、ちぃちゃん? …嫌だった?」 普段の間延びした口調に戻った声に、俺は顔を上げて幾度となく首を縦に振る。 それに眉をしかめて小さく頷いたフミは、俺の頭に手を乗せて言った。 「ごめん もうしないから」 「ひっぐ…ほ、ほんと…?」 「だから今日のことはナシ 全部夢 明日からはいつものフミと、いつものちぃちゃん OK?」 諭す様にそう言ったフミ。 俺はまた必死に首を振って同意し、それでも涙だけが引いていかない。 さっきのフミは…何だったんだ? 「…帰ろっか、ちぃちゃん」 そう俺に手を差し伸ばした笑顔は、どこか悲しそうだった。
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