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翌朝。
いつもの待ち合わせ場所でフミを待っていた俺は、ちょっとだけ落ち着きがなかった。
キョロキョロと何度も辺りを見渡して。
その姿がないことに溜息を溢す。
多分、まだ心の整理が付いていないから、顔を合わせないことに安堵しているんだ。
そんな事を言ったって、フミはここに来るんだけど。
「ちーい、ちゃんっ」
下を俯いて唇をへの字に曲げていたとき、俺の肩が叩かれた。
ビクッと強張りながらも後ろを振り返ると、笑顔の眩しいフミがそこに居る。
…言ってた通り、いつものフミだ。
うるっと涙を滲ませる俺に首を傾げたフミは、また優しい笑顔を向けながら頭を撫でてくれた。
「どうしたの?」
「…なんでもない」
「えー?
そんな顔されてたら渡し難いんだけどー」
「なにが?」
「こ・れ!」
そう言って目の前に出されたのは花柄の紙袋。
中を覗くと、親子丼が入っていた。
「え、マジで作ってくれたん!?」
「だって約束したじゃない」
「マジかー!!
フミありがとう!!」
嬉しさ余って、フミの腰元に抱き着く俺。
昨日のことはもう、忘れることにした。
俺とフミは、この関係が一番安定しているから。
あの時のフミは、きっと見間違いだったんだ。
…そう、あれは夢。
___だと思いたい。
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