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「その辺にしろ、このバカ」
「あぎっ!?」
ヴァコーンと頭から良い音が鳴ったかと思うと、後頭部に強烈な痛みが走った。
じわじわと広がるその感覚に思わず涙目で後ろを振り返る。
そこには怪訝な顔付きで俺を見下ろす1人の女が立っていて、その手には分厚い辞書が握られていた。
「イテェだろ、弥生!」
「高橋の方がよっぽど痛い思いしてるわ」
「や、弥生さああん…!」
「だから泣くんじゃねえよ、男が!!」
この俺様に手を挙げられる唯一の女、三里 弥生は俺の幼なじみである。
小中高と腐れ縁で同じ時間を共に過ごし、喧嘩っ早い俺の保護者という役目も負っている。
まあ、そんなもん頼んじゃいねえんだけどな。
おまけに周りからは「野獣ハンター」と唱われ、中々慕われていた。
俺は渋々と言った様に高橋の背中から退くと、弥生に向かって中指を一本突き立てた。
「イカれババア」
「あんだとコラ」
「ィダダダダ!!
折れる折れる!!」
俺が立てた指をゴリラ顔負けの力で押さえ込む弥生。
俺から言わせたら「野獣はお前だろ」って感じだ。
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