8㌔の勇気

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「俺の大好きな子が俺のこと大好きって」 確かに、それは最上級な理想だよ。大好きな人に大好きになって貰えるなんて。 嵐があたしを大好きになる、なんてね。 だけど……。 「……本当に?」 そう言うと、嵐はシッと指を立てた。 そっと彼が目を閉じたから、あたしも真似をした。 何故か、耳元に届いてくるのは、あたしの大好きな切ない片想いの歌。 確か、100メートル走の曲を選んでいるときに、手に持って嵐に笑われた。 音楽に耳を澄ましていたはずなのに、嵐がくれた「好き」が心の中で転がり始めた。 切ない歌が明るく聴こえてくる。 「好き」が雪だるまみたいにどんどん大きくなっていく。 だって、あたしの「好き」もそこに付け足してしまってるから。 これ以上、大きくなったら、心の中に置いておけなくなりそう。 そしたら、何処に置こうか。 2人の真ん中に置けるかな。 嘘じゃないと思っていいのかな。 唇に柔らかくて、ヒヤリとした感触が伝わった。
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