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同じように、首を持ち上げる男の子が、目の前に立っていた。
鼻がツンとして高い。大きな瞳は、花に吸い込まれているみたいだ。うっとりと潤んでいる。
あたしは、花ではなく彼に吸い込まれたみたいで、ただ見とれてしまった。
持ち上げた首が横を向くと、あたしと目が合った。
ああ、この人だって分かった。
一瞬で、恋に落ちた。
きっと、今。桜の群れを離れた花びらが、地面に辿り着く速度より早かっただろう。
久木野嵐(クギノアラシ)。
あたしが想い浮かべたような理想の男の子だった。
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