8㌔の勇気

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「人の椅子、蹴らないでくれますかー?」 その声にハッとして、慌てて涙を手の平で拭いた。 顔がぐしゃぐしゃになってそうで、振りむけなかった。 中庭から入ってきたのかな、気付かなかった。 だけど、嵐の声に間違いはなくて。 「足長いから、当たっただけだよ」 「よく言うよ、俺より短いくせに。絶対蹴っただろ?」 足音とその声は、あたしに近付いてくる。 「蹴ってません。ていうか、なんでここにいるの?」 「さっきフラフラ歩くタマを見かけたから。迷子のタマを探しに?」 「あたしは、嵐の猫か」 そう言うと声も、足音も聞こえなくなった。
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