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「………それじゃ」
「え、あ……」
戸惑うような真白さんの声を振り切るように、俺はクルリと踵を返した。
そうして、元来た道を早足で戻り始める。
「あ、ありがとう、忍くん……!」
真白さんの声が追い掛けてきたけど、俺は振り返ることができなかった。
──── 顔が、熱いのがわかったから。
鼓動がトクトクと速くて、俺は胸元でぎゅっと拳を握る。
色んな感情が込み上げてきて、何とも言えず胸が苦しかった。
こんな風に思いがけず、二人で話すことが出来たことがやっぱり嬉しくて。
でも同時に、あんなに近くにいても触れることすら叶わない遠い人なんだと思い知らされた。
真白さんの心が、兄貴でいっぱいなんだってことも。
わかってはいたけど。
………やっぱりどうしようもなく、切なかった。
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