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急いで公園に行くと、小さな女の子と若い母親が猫を抱いているのに出くわした。
「すみませ~ん」
美桜はその親子に向かって駆け寄る。
「はい?」
「その猫なんですけど」
「ああ、アナタの猫ちゃん?」
母親が聞いて来た。
「いえ、私のではないんですけど」
「そう」
「この子連れて帰るの~」
幼い女の子が嬉しそうに言う。
「飼い主さんがいないなら、うちに連れて帰ろうかと思って」
若い母親もその気になっていた。
「いや、あの待ってください」
じっくり見るまでもなく間違いない。顔といい柄といい手足の短さといい、どれをとっても依頼主の猫なのだ。
「その猫には飼い主さんがいらっしゃいまして」
「そうなの?」
「はい。私はいなくなったその35万円の猫を探してたんです」
「さ、35万!」
母親が素っ頓狂な声をあげたから、女の子は驚いて猫を抱く手を離してしまった。
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