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女の子の手をすり抜けた猫が、小走りで駆け出す。
「可愛ぃい~~~~」
手足が短いから、バタバタと這うように走る姿の猫を見て、美桜は声をあげた。
と、呑気なことを言っている場合ではなく、この猫を依頼者の元へ連れて帰らなければならないのだ。
「ちょっと待って」
美桜はすぐに猫の後を追った。
手足が短くてドタバタ走っているから、すぐに捕まると思ったのに、これが意外とすばしっこい。
美桜は手に持っていた猫を運ぶためのバッグを放り投げ、必死で逃げる猫を追う。
「ちょ、ウソでしょ?」
あんな小さな女の子が捕まえていたのに、何で自分には捕まえられないのか。
暑い中走り回って、汗だくになったところで、突然男の人が走って来てあっという間に猫を抱きかかえた。
「はい。可愛い猫だね」
そう言って猫を差し出すさわやかな笑顔は、去年まで同じ学校にいて今は地元の大学に通っている島村鷹斗だった。
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