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気が抜けたのか何なのかわからない不思議な気持ちに襲われて、私はゆっくりと椅子の背もたれに背中を預けた。
私の様子に気付いたのか、忍くんはもう一度椅子に腰を下ろす。
同じ目線になった忍くんの顔を、私はじっと見返した。
「そうすることが……償いになるの?」
それを聞いた忍くんは、切れ長の目を緩く見張った。
ほんの一瞬、視線が絡み合う。
そのあと、忍くんは顔を斜めに伏せ、顎に手を当てて考え込んでしまった。
「……………」
たっぷり5分は待ったかもしれない。
さすがに業を煮やして口を開きかけた時、ようやく忍くんは顔を上げた。
「『償う』っていう名目がなきゃ、ここには来れない?」
「……………!」
私は思わず言葉に詰まる。
そういう言い方をされるとすごく困るけど……。
過去の償いが何かできるならと思って、忍くんと向き合うって決めた訳だし。
忍くんの望むことなら、それは別にどんなことだっていいはずなんだけど。
でも少し…っていうか、全く思っていたこととは違っていて、どうしたらいいのかわからないっていうか。
………じゃあ、どんなことなら納得したのかって聞かれると、それは私にもわからないけど……。
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