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夢を、見た。
高校1年生の時の夢。
学校の近くに図書館があって、秋ごろから私は毎日のようにそこに通っていた。
本が好きというよりは、あの独特の空気感が好きで。
学校よりも自宅よりも、勉強がはかどったから。
彼と出会ったのも、その図書館だった。
きっかけは単純。
私が落とした消しゴムを、一つ席を空けて座っていた彼が拾ってくれたこと。
消しゴムを手渡してくれた時の彼の笑顔が、ふんわりと優しげで。
………一目惚れだった。
それから時々顔を合わせると、会釈を交わすようになって。
ある日思いきって、自販機の前で休憩している彼に話しかけてみた。
楢原 透(ならはら とおる)。
それが彼の名前だった。
2つ年上の、高校3年生。
受験生だって、笑って教えてくれた。
その日から、10分だけ自販機の前で彼と話すのが日課になった。
私と同い年の弟がいること、通ってる高校のこと、志望大学のこと。
笑顔で優しく、色んなことを話してくれた。
私の気持ちは、多分バレバレだったと思う。
初恋だったから、ただ目の前のことに一生懸命で、駆け引きとかそんな器用なことできる訳もなかった。
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