452人が本棚に入れています
本棚に追加
「使って」
「あ……ありがとう」
無造作に手渡された黒いパーカーを、私は会釈しながら受け取った。
袖を通すと裾がすごく長くて、改めて忍くんの上背の高さを実感する。
家に向かって、私達は並んで歩き始めた。
気が回らないって自分でも言ってたし、実際スリッパも出してくれなかったけど。
こうして家まで送ってくれたり、上着貸してくれたり……今もちゃんと車道側歩いてくれたり、こういう細かい気遣いは出来るんだよね。
────不思議だけど。
「忍くんに送ってもらうの、2回目だね」
横を歩く忍くんを見上げながら言うと、忍くんは無言で小さく頷いた。
「雨……降ってたよね」
「………………」
彼の言葉を受けて、私はなんとなく空を見上げた。
あの日のこと、忍くんも覚えてるんだ。
時間にしたら、たった10分ぐらいのことだったけど……私の中ではすごく印象深い思い出として、心に残ってる。
そう言えばあの日も、今と同じぐらいの季節だったなぁ……。
最初のコメントを投稿しよう!