321人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
忍くんはほんの一瞬手を止めたけど、すぐにまたそれを再開させて口を開いた。
「俺、高校卒業したあと普通に大学行ったんだけど、2年の時におふくろが倒れたんだ」
「……………」
「その時に初めて自分の将来について考えて……。俺、多分普通の会社勤めとか無理だな…って、漠然と思ったんだ」
う、うーん。
それについては何も言えないけど……。
「んで、昔から結構物を作ったりするの好きだったなーと思って。色々専門学校とか調べてる中にパティシエのパンフレット見つけて」
「……………」
「これだって思ったらいてもたってもいらんなくなって、大学中退して専門学校に通い始めたんだ」
「………そう……だったんだ」
驚いて、私はマジマジと忍くんの横顔に見入った。
割りと気だるげで無気力に見えるのに、そんな風に衝動的に動く一面もあるってことが、少し意外だった。
最初のコメントを投稿しよう!