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食べ終わった私は口を拭きながら、知らない業界の話に興味深く耳を傾けていた。
何気なくレストランって行くけど、メニューとかってそんな風にして決まるんだなぁ…。
たくさんの職人さんがアイデアを出しあって……でも選ばれるのってその中のほんの一握りなんだ。
「忍くんも、ドルチェのアイデア出すの?」
「もちろん。すげーチャンスだもん」
「あ、もしかして……今食べたのもアイデアの1つだったりする?」
「うん」
頷いて、忍くんはグッとこちらに身を乗り出してきた。
「どうだった?」
「え……美味しかったよ、すごく」
何だか急に責任重大な気がして、私は何か他に言うことはないかと考えを巡らせた。
ただ『美味しい』だけじゃ、忍くんだって参考にならないよね……。
「そう、だな。味はすごく美味しいけど……見た目がちょっと地味かも……」
「え?」
忍くんが目を見張ったので、私は焦って両手を左右に振った。
「あ、ごめん。素人が偉そうに……」
「いや、いいよ。思ったこと正直に言って」
いつも目を逸らしてしまう忍くんが、今はすごく真剣な目で真っ直ぐに私を見ていた。
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