tre-2

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マンションを見つめるように遠い目をしながら、忍くんはそう言った。 まるで全てを見透かしているような彼の言葉に、私の心臓は抉られたような感覚を覚えた。 「真白さんが新しい人を見つけて、幸せになることを……兄貴はきっと望んでる」 「……………」 「────俺は……そう思うよ」 それっきり忍くんは、マンションへ戻るまでの間、一度も言葉を発さなかった。 それに倣うように、私も口を閉ざす。 頬を刺すように秋の風は冷たくて……。 私は何だか泣きそうになってしまった。 忍くんはきっと、私の為を思って言ってくれたのだろう。 透さんのことは忘れて、新しい人生を歩んだほうがいい…って。 それが私の幸せなんだ…って。 でも───言わないでほしかった。 透さんとそっくりな顔で、新しい人を見つけろなんて……。 言わないでほしかった。  
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