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家に戻ると、忍くんは冷蔵庫へと直行した。
さっき作った生地が凍っているかどうかを確かめてから、オーブンへ入れる。
忍くんが言うにはフォンダンショコラらしいけど、凍ってから焼くなんて全然知らなかった。
本格的なドルチェって、ホントに手間がかかって大変なんだなぁ……。
「………………」
忍くんは、さっきの会話なんかまるでなかったみたいに淡々と作業していた。
テーブルの上に買い物してきたものを広げながら、それを見て私は溜め息をつく。
さっきの忍くんの言葉は……私にとっては物凄く大きな意味を持つ言葉だったけど。
彼にとっては、特に大したことのない会話だったようだ。
食事のことにしろ何にしろ、忍くんにとってはまずドルチェが最優先事項で。
きっとその他のことは二の次、三の次なんだろう。
────オーブンの中を真剣に見つめる忍くんの横顔を見ながら、私はそう感じていた。
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