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忍くんと向かい合って食べる夕食は、ハッキリ言って会話も弾まなかったけど。
透さんの話を蒸し返されたりもしなかったから、彼のその無頓着さが今は逆に有り難かった。
「ごめん、俺、盛り付けするから。悪いけど真白さん、お茶の用意してくれる?」
食べ終わってすぐ、忍くんは席を立ってそう言った。
とにかくオーブンの中が気になって仕方ないらしい。
私は苦笑しながら頷き、続いて椅子から立ち上がった。
ゴミを片付け、テーブルの上を布巾で拭いてからコンロへ向かう。
お湯を火にかけたところで、忍くんが話しかけてきた。
「そっちの棚に紅茶とか置いてるから」
「ん、わかった。あ、忍くんは何飲む?」
「何でもいい。そこから適当に選んで」
もう忍くんは、私に見向きもしない。
ドルチェのお皿に何やらスプーンで丁寧にソースを滴らせている。
私は肩をすくめてから、棚の扉を開けた。
思ったよりもたくさん紅茶の缶があって、私はびっくりする。
………そう言えば、店で貰ったって言ってたっけ。
ビアンカで出してる紅茶なら、きっと凄く高級なんだろうなぁ。
その横にポツンとあるスティックのカフェオレの箱が、1つだけ妙に安っぽくて浮いていた。
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