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「────ねぇ、忍くん」
声をかけると、未だ携帯と格闘していた忍くんは、画面を見つめたまま「ん?」と答えた。
私は彼の指をじっと見つめながら、口を開いた。
「今度、マニキュア塗らせてくれない?」
自分でも唐突な申し出だという自覚はあったけど、忍くんにとってもかなりの珍発言だったらしい。
さすがに携帯を触る手を止めて、びっくりしたように私の顔を見下ろした。
「…………はっ?」
「マニキュア、塗らせてくれない?」
「え、何? 誰に?」
「忍くんの指に」
「……………」
「いや、すっごくキレイな指だなー…と思って」
忍くんは眉をひそめ、自分の手を広げてじっとそれに見入った。
「別に……普通だと思うけど」
怪訝そうな顔で、忍くんは首を傾げる。
彼女とかに、言われたことないのかな。
もし私が彼女なら、この指に毎日触れたいし……触れてほしいって思いそう。
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