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「7年前から思ってたんだよね」
「え?」
「ほら、1度だけ雨の日に送ってもらったことあったでしょ。あの時、傘持ってる手を見て綺麗だな…って」
「………………」
「マニキュア、似合いそうだなって思ったの」
あの日どんな会話を交わしたのか正直あんまり覚えてないけど、ちょうど目線にあった彼の手を見てそう思ったことはすごくよく覚えていて。
何となく7年越しに、その願望を叶えてみたいって……思ってしまった。
「片手だけでも、ダメ?」
手を使う仕事だし、何より男の人だから、断られることを承知で懇願してみる。
忍くんは困ったような顔でしばらく瞳をウロウロさまよわせていたけど。
やがて観念したように、ふうっと大きく溜め息をついた。
「その日にすぐ取ってくれるなら……別にいいよ」
思いがけずOKを貰って、私はパッと笑顔で忍くんの顔を見上げた。
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