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「……………」
何故かちょっと、忍くんの歩くスピードが速まった気がした。
斜め前を歩く彼の襟足が、微かに風に靡いている。
少し寒いのか、空いたほうの手を上着に突っ込んでいた。
ハラちゃんは忍くんをイケメンって言ってたけど……今は確かにカッコいいなって思える。
彼の生き方や考え方に、触れたからかもしれないけど。
無口だし何考えてるかよくわかんないとこあるけど、何だかんだ優しいし。
…………モテそう、だよね。
「昔は……いたことあるの? 彼女」
興味を引かれて、私はつい彼に聞いてしまっていた。
忍くんは歩きながら、肩越しに私を振り返る。
なんでそんなことを聞くんだろう、というような、どこか困惑した表情だった。
「いたよ。……かなり前だけど」
「……………」
その答に、私はひどくびっくりしてしまった。
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