tre-2

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「……………」 何故かちょっと、忍くんの歩くスピードが速まった気がした。 斜め前を歩く彼の襟足が、微かに風に靡いている。 少し寒いのか、空いたほうの手を上着に突っ込んでいた。 ハラちゃんは忍くんをイケメンって言ってたけど……今は確かにカッコいいなって思える。 彼の生き方や考え方に、触れたからかもしれないけど。 無口だし何考えてるかよくわかんないとこあるけど、何だかんだ優しいし。 …………モテそう、だよね。 「昔は……いたことあるの? 彼女」 興味を引かれて、私はつい彼に聞いてしまっていた。 忍くんは歩きながら、肩越しに私を振り返る。 なんでそんなことを聞くんだろう、というような、どこか困惑した表情だった。 「いたよ。……かなり前だけど」 「……………」 その答に、私はひどくびっくりしてしまった。  
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