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「…………は?」
「泊まっていったら……ダメ、かな」
探るように聞き、私は忍くんの様子を窺う。
忍くんはしばらくじっと私の顔に見入っていたけど、やがてハアッと大きな溜め息をついた。
「────ダメ」
キッパリと、忍くんはそう言った。
マニキュアを塗ることすらダメって言わなかった忍くんが、あんまりハッキリ『ダメ』って言ったので、私は意表を衝かれてしまった。
もうちょっと考え込むかな…って、思ったのに。
「………どうして?」
思わず問うと、忍くんはうっと言葉に詰まり。
口元を拳で隠して、フイと横を向いた。
「弟じゃないから」
「………………」
一瞬意味がわからなくて、私はポカンと忍くんを見つめる。
拳で半分隠れた彼の横顔は、うっすら紅潮していた。
弟じゃないから……って。
それって、自分は男だから…って、こと?
男だからってことは、要約するとつまり……。
間違いが起こるかもしれないって、こと……だよね。
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