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「………いいの?」
少し離れた場所から、窺うような声がした。
「いいよ、もちろん」
「………ホントに? 気持ち悪くない?」
「気持ち悪くなんかないよ」
しつこいぐらいの念押しに、私はクッと吹き出す。
「私だって高校の時から忍くんの手キレイだなーって思ってて、それと同じことでしょ?」
「……………」
「そんなこと言ったらマニキュアまで塗らせてもらった私の方が、よっぽど気持ち悪いよ」
口にして改めて、男の人に無茶なお願いしたよなーって思う。
それに比べたら髪の毛触るぐらい、お返しにもならないよね。
「忍くんこそ、私のこと実はイタい女だなーって思ったんじゃない?」
「………そんなことないよ」
ぼんやり浮かんだ忍くんのシルエットが、わずかにこちらに向かって動いたのが見えた。
「むしろ……嬉しかったよ」
「え?」
「真白さんも、俺のこと見ててくれてたんだって」
ギッ、とソファーが軋む音が聞こえて、すぐ側に忍くんの気配を感じた。
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